一度かぎりの空

美しい朝焼けの空、もう二度と見ることのない、今日かぎり、今このときだけの雲が輝いています。
「あと、十年。」
不意に魂さんからの声がしました。
えっ?何が十年なのかな?
「えりちんの、今生の持ち時間。だとしたら?」
え~っ!!!
そうなの?知らなかった。
だとすると、目の前の玄米茶も、あと何杯飲めるだろう?限りがあります。
まだ寝息を立てている家族の平和な寝顔も、あと何度見られるだろう?
限りがあります。
ほんのわずか涼しくなった空気の中、懸命に鳴いている秋の虫たち。
入江に満ちてくる波。
アクビをする猫。
みんなみんな、カウントダウンです。
生きるって切ないですネ。
なんだか急に、夏休み最終週の小学生のような気分になりました。私の宿題、最終日までにちゃんと終わるかなぁ。
「やるべきことも、しなくてはならないことも、何一つない。」
またまた魂さんの呟き。
「この世は壮大なる、暇つぶし・・・」
(なんか、今日の魂さん、口調がクレしんのボウちゃんみたいだなぁ・・・。)
「あの世は平和過ぎて、もう、暇で、暇で、退屈で、ふわぁ~・・・(とアクビ)」
ふうぅわぁ~・・・こっちまでアクビが伝染って来たよ~。
そっかぁ・・・そうねぇ、最近ちょっと忙し過ぎたかな?
いや、タマちゃんの目線で見れば、忙しいフリで慌ててるフリをしてただけ、か。
そうです、そうです!思い出した!
「無」の完璧で平和な世界が退屈で、ちょっと遊びに来てたのでした!
ポトリ!
静寂を破り、窓の外で柿の実が落ちました。
しらじらと夜が明け、秋の虫に代わり、蝉が短い命を鳴き尽くします。
今日は一日、全てが起きてくるものをただ、受け止めてみよう。
味わい、そして流していこう・・・
限りある、不完全な、何一つ思い通りに行かない(と、勝手に思い込んでいる)、愛しいこの地球での一日を・・・
れべいゆ