雲一つない漆黒の闇に煌々と輝く月に誘われ、盃を片手にそぞろ歩き。
引き始めた波が、静かにテトラポットを濡らしています。
波間に映る月光を眺めていたら、昔覚えた歌が不意に口の端に浮かんできました。
嘉辰令月歓無極(かしんれいげつかんむきょく)
万歳千秋楽未央(ばんぜいせんしゅうらくびよう)
平安時代に、貴族の間で流行した朗詠です。
『皆で眺めているこの美しい満月のように、
今宵の私の歓びは限りがない
千年歌っても、万年歌っても、
この楽しさは、決して終わらない』
人間って面白いですね。
歓びに気持ちの矢を向ければ歓びに当たり、
怒りに気持ちの矢を向ければ、それもちゃんと命中します。
藤原の道長さん、あなたの胸を満たした無上の歓びは、千数百年の時を超え、独りぼっちで月を眺める私にも、さざ波のように届きました…
欠けることのない歓びをこの月鏡に、いつまでもいつまでも映していたい…そんな夜です。
今宵は平成最後の満月…あなたにとっての平成は、どんな30年間だったでしょうか?
月はこれからもそっと、あなたの毎夜を見守ってくれることでしょう…
安らかな休息と共に…
おやすみなさい…
れべいゆ