真・蝉の一生

日本の夏と言えば蝉。蝉と言えば夏休みです。

 

早朝、ラジオ体操のついでに、大きなクスノキの下にしゃがみ込み、地面に開いた半径5mmほどのいびつな穴に細い木の枝をそっと差し入れると、中からグイッと掴んで来る感触があり…そぉ~っと引き上げてみるとそこには、ピカピカに光った蝉の幼虫が姿を現します。

 

掌に大切に包んで家に持って帰り、カーテンに止まらせておくと夜半、皆が寝静まった頃に羽化が始まります。

 

背が割れ、中から妖精のように美しい薄水色の儚げな成虫が出て来るたびに大歓声!

忘れられない夏の日の思い出です。

 

蝉は幼虫の姿で土中に苦節7年。

そのあと、やっと太陽の輝く地上に出られても、たった1週間で死んでしまう…そう父に教えられた時の憂鬱な気分は、未だに忘れられません。

 

 

しかし昨今、謎の多い蝉の研究も進み、「土中に苦節7年。1~2週間の儚い命」という定説は、どうやら人間の思い込みが生んだ、センチメンタルなストーリーであったことが分かって来ました。

 

そもそも、蝉にとって土の中は、温度変化も少なく天敵もいない。巣穴のすぐ横には太い栄養たっぷりな木の根っこがあり、苦労しなくてもふんだんに養分を吸収することが出来る。

すなわち蝉にとっては すこぶる快適な空間であり、私たち人間が想像する、「暗い・狭い・孤独」というような、まるで独房に監禁されているような状況ではないというのです。

 

ですから蝉にとって桃源郷のような土中の時期こそがメインであり、そのあとの何日かは、「やれやれ、自分もここまでたっぷりと良い思いをさせてもらった。せめて最後くらいは、次世代のために一肌脱ぐか…」と、やおら地上に出て、照り付ける太陽や、鳥や子供たちの虫取り網をかいくぐり、ジィー、ジィーと声を嗄らしながら、最後のご奉公をする…と、まあ、最近ではそのように考えられて来たらしいのです。

 

これは何だか、人間にも当てはめることが出来るかも知れませんね。

 

他人から見たら「可哀相」に見えても、実際に本当に可哀相な状態であるかは、見方を変えるだけで反転することも、大いにあることでしょう。

 

これからお盆に向けて、普段は離れ離れに暮らしている、家族や親戚と過ごす機会も増えて来ます。

 

現在、「ひきこもり」、「独身」、「休職中」、「療養中」、「離婚」、「借金」などを経験している人に対して、自分は優位にいると勘違いをして、安易に上から目線で決めつけて意見をしないように、くれぐれも気を付けたいものです。

 

また、もしもあなたが誰かに決めつけられる立場に立ってしまったら、その場に辛抱強く居続けて、的外れな説教を聞き続ける必要もありません。

 

「ごめんあそばせ~」とニッコリ笑って席を外し、あなたが一番居たい場所に行き、ご自分に充電をしてあげて下さい。

 

「幼虫の時もハッピー!空を飛ぶのも悪くないネー。」

 

それが蝉の、本当の感想かも…

 

今日も蝉は命の限り、懸命に夏を歌っています。

 

 

 

れべいゆ